薬をきちんと飲まない

薬をきちんと飲むとは思っていない。
毎日のことだから、飲み忘れることもある。

性格の問題だと考える人もいるだろうが、
それを言うなら、
毎日きちんと飲んで飲み残しのない人は、
むしろかなり几帳面な性格なのだと思う。

普通の人は、
一か月分の薬が終わるはずの日になっても、
何錠か残っていることが多いだろう。
それで普通なのだ。

100円ショップにある薬の整理ケースを買ってきて、
月曜日の朝、昼、晩、寝る前とか、分類する。
いつ飲み忘れたか、よく分かる。
多分、忘れる日がある。

しかしここに問題がある。
血圧や血糖、コレステロールは、数値で結果が出る。
飲み残した分だけ、薬の効きは悪いはずで、
お医者さんは、もう少し薬を多めにするだろう。

その薬を急に几帳面になって、全部飲んだら、
実際は、少しだけ効きすぎることになる。
いつもと同じくらい、飲み忘れないと、
最適処方にならない。

それでいいはずはない。難しいものである。
血圧も、一日の中で変動する。
血糖値はなおさら日内変動が大切になる。
コレステロールについてはまあまあ多少ならどうでも問題ない。

それは患者さんも分かっているから、
飲むように注意するが、
うっかりすることは誰にでもあるもので、
飲んだ気になって忘れていることがあるだろう。

頭痛のように、薬を忘れたら痛い、
痛くなかったら、飲まなくていいという薬は、
分かり易い。

血圧の薬でも、飲み忘れていると、
次の日くらいには血圧が上がるから、
家庭血圧計で知ることができる。

抗うつ剤や抗精神病薬はそうはいかない。
代謝が複雑で、一段目、二段目とあったりして、
それぞれが別々の効き目があったりする。
副作用はすぐに出るが、効き始めるのは、
二週間くらいかかるといわれていて、
そうだとすれば、飲み忘れた影響が出るのも、
そのくらい後になってからだと考えられる。

その意味でも、抗うつ剤の長期処方には問題がある。

また、血圧でもコレステロールでも、
食習慣など、生活習慣の問題を解決しなければならないように、
うつ病でも、それが大事だ。
感じ方の習慣や考え方の習慣、
頑張りすぎる癖や文句をいえない性格、否定的な思考習慣、
そのあたりが結局、うつ病につながることがあるので、
生活をレポートしてもらい、チェックする必要がある。
抗うつ剤を飲んでいるから、
無理をしてもいいのだと思っては、困る。
コレステロールを下げる薬を飲んでいるから
何をどんなに食べてもいいというようなもので、
そんなはずはない。