メディア漬けから子どもを守る

2005年の報告から

◆2歳以下
日本で3地域1900名の1歳6ヶ月の子どもさんを調査しました。
テレビやビデオを長く見ていることと
有意語出現との間に関連があると統計上示されました。

子どもの近くにあるテレビが8時間以上ついていて、
子どもが4時間以上テレビを見ている環境では、
有意語が出現しない割合が高くなります。

さらに詳しく行動を調査してみると、
テレビがついているときは親子の会話が乏しくなります。

親の声掛けが少なく、
話が短くなります。
画面を見ていて話すとしても単語だけで、
説明となる文章を言わないようになります。
やはり親子が向き合って会話することが
言葉の発達を促すようです。

以前何かの番組で、
中国語講座の効果を測定しようというので、試みがありました。
赤ん坊に中国語の番組を見せて、その後で中国語を聞かせて、
脳波を測定するのですが、
テレビで見た場合と、
テレビでやったのと全く同じ人に同じように目の前でやってもらった場合とを
比較したところ、
目の前で本物がやった方が
脳波の反応はよかったと言います。

正確なメカニズムは分かりませんが、
やはり生身の人間が目を見て話すことは
効果が大きいのだと思います。

子どもは大好きなキャラクターが登場したりすると
喜んで母親の顔を見たりするものですが、そのときがいいチャンスですから、
母親の側から言葉で応答して、
説明したり言葉を引き出したりしてみましょう。

一緒に画面を見て、笑うべきところで笑い、泣くべきところで泣き、
怒るべきところで怒り、
そのようにして教育することができるはずです。
子どもは、このような場面ではこのように笑うのかと学習するはずです。

◆幼児期以降
テレビとビデオのほかにゲームなども使うようになります。
よい影響も悪い影響もありますが、
親は悪い影響について特に心配しています。

たとえば、
人を馬鹿にした態度、
下品な行動、
暴力シーン、
年齢不相応な知識、
子どもは人の真似をしやすいこと、
しかも善悪や危険の判断が未熟であることを考えて、
番組を選んでみせることが大切です。
画面に好ましくないものが映ったときには
そのときにコメントして
「いけないこと」ときちんと理解してもらうようにします。

よい影響もあります。
たとえば、テレビで見た動物や絵本に関心を持って、
実物を見に行ったり、本を手に取ったりする。
工作、料理などを家族と一緒に体験する。

大切なことは、テレビ視聴だけで終わらせずに、
実際に家族で一緒に何かをするきっかけにすることです。
受動的で間接的な体験から、
能動的でしかも家族と一緒の体験にしていくことで、
実りあるものになります。

自分でスイッチを操作できるようになると
長時間視聴を避ける工夫が必要になります。
箇条書きにして確認しましょう。

長時間視聴を避ける工夫
 ・子ども部屋にテレビを置かない
 ・見終わったら消す
 ・消すと怒る場合はタイムスイッチで消す
 ・テレビを子どもの視界から遠ざける
  (カバーを掛ける。ビデオやゲームは収納してしまう。)
 ・コンセントを外す。
 ・テレビ・ビデオ・ゲーム以外のものに関心を向ける。(玩具や絵本)
 ・テレビがないところで遊ぶ
 ・子どもが部屋に入ってきたときにテレビがついていないようにする
  (子どもが目覚めたときや外から戻ったとき)

◆子どもを守る
テレビ・ビデオ・ゲームなどに流れている、暴力や性の表現は子どもへの長期的影響が心配されています。新聞による報道ではある女児殺人事件の犯人は「高校時代に初めて見たロリコンアニメが忘れられず、児童ポルノに関心を持ち、真似をしたかった」とのことです。

家庭では番組を選択して見せます。
子どもが好んでみる番組の内容を知っておきましょう。
子どもが好ましくないことの真似をしていたら注意しましょう。
子どもをほかの遊びに誘導することもよいことです。
子ども同士の情報交換もありますから、親同士も情報交換して、
問題のある番組はみんなで見せないようにしましょう。

テレビ番組の制作側では夕方の5時から9時までは
子どもに配慮する時間帯としています。
「放送と青少年に関する委員会」があり、番組内容を検討し、
さらに視聴者の意見を受けたりしています。
気になる番組について、意見を積極的に投稿するのも有効です。

◆テレビゲーム熱中経験者からのアドバイス
よかったこと
・達成感がある。
・気分転換ができる。
・コンピュータに興味を持つきっかけになった。
・熱中体験ができた。
・友人が増えた。話題ができた。
・友人や家族と一緒にやったことが思い出になっている。

悪かったこと
・ゲームに熱中して単位が取れない人もいた。退学になった人もいた。
・長時間になる
・他のことを犠牲にする・宿題しない・勉強後回し
・体が疲れる・だるい
・目を悪くする
・立体視ができなくなる
・耳が悪くなる
・夜更かしする・昼夜逆転・遅刻
・トイレを我慢する

医学的に測定すると
・瞬きの減少
・呼吸増加
・心拍数増加
・脈圧低下(血圧の上下の差)
・眼精疲労

◆親がテレビ・ビデオ・ゲームに熱中する場合
この場合には子どもの顔を見て語りかけることができなくなります。
目と目を見あって話すことが大切です。

◆子ども同士が一緒に遊べる場所を確保すること
ゲームばかりしていることの一因は、
遊ぶ場所がない、相手がいないことです。
空き地がない、公園がない、体育館がない。
遊ぶ相手はみんな塾や習い事で忙しい。
そのような現状も変えていきたいものです。