都立駒込病院のPFIを三菱商事が落札
落札価格は1860億円強、契約期間は約20年
この事業は、駒込病院を現在の場所で大規模改修し、がん・感染症医療センター(仮称)としてリニューアルオープンするもの。2011年9月の開院を予定している。
PFI事業には、病院をはじめとする各種公共施設の建設や運営を、民間事業者に任せることで、コストを削減しつつ良質なサービスを提供しようという狙いがある。駒込の場合、病院の設計、工事、施設の維持管理、医事や給食などの周辺業務、医薬品や医療機器の調達などの業務と、それらを統括的にマネジメントする業務などを三菱商事グループに任せることになる。これらの建築・運営費用の2026年3月末までの合計額が、落札価格の1861億円だ。
落札した三菱商事は、山下設計、戸田建設、麻生、エヌ・ティ・ティ・データと組んで、入札に参加した。同社は、東京都が昨年実施した多摩広域基幹病院および小児総合医療センター(いずれも仮称)の事業者選定では清水建設に敗れたが、今回はほかに応札した企業はなく、1100点満点中980点の総合評価を得て落札に成功した。
近年、自治体病院の経営改善の一手法として、PFI事業も注目されてきており、既に、八尾市立病院(大阪府)、高知県と高知市が共同で開設した高知医療センター(高知県)、近江八幡市民病院(滋賀県)の3病院が、PFI事業で運営されている。神戸市立中央市民病院や愛媛県立中央病院なども、PFI事業の具体的な準備に着手している。
ただし、駒込病院は極めて専門性が高い医療を行っているだけに、これまでの病院PFI以上に、建築・運営面で難しさがあると思われる。一方、三菱商事は、八尾市立病院のPFIで代表企業を途中で他の企業と交代した経緯もあるだけに、駒込病院のPFIにかける意気込みは大きいだろう。また、福岡県で1000床規模の病院を実際に経営している麻生が加わっている点も、注目される。
今後、東京都と三菱商事の間で、今月中にPFIに関する基本協定が締結される。そして、今年中には詳細な事業契約が結ばれる予定だ。
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一方で、PFI方式の破綻が言われている。
滋賀県近江八幡市の総合医療センターが、新規オープンから1年半もたたないうちに24億円の赤字に直面、市はこのほど経営の大幅な見直しに乗り出した。
市長の冨士谷英正氏は、「PFIこそが赤字の原因だ」として、既に契約解除に向けた具体的な交渉に入っている。PFI契約を結んだときの予測とは大きなズレが生じてしまった。やはり、当初の経営計画に甘さがあった。
PFIの仕組みそのものを見直す必要がある。現在、病院の建物や医療機器などは、大手ゼネコンが出資して設立したSPC(特別目的会社)の所有だが、市がそれらを一括で買い取りたいと申し出ている。現在、毎年数億円以上支払っている金利相当分を、半分程度に減らせる見通しだ。
PFI賛成の意見は、
PFI方式には、看護師を雑務から解放し、患者サービスを向上させる効果もある。SPCに指示さえすればみんなやってくれる仕組みになっているからだ。「PFIが赤字の原因」との指摘に惑わされている市民もいるが、医師や商工関係者らの間からは、問題点を冷静に議論しようという声が上がり始めている。
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